毛髪のメカニズム

毛髪には、頭皮の表面から外に出ている毛幹部と、頭皮の内側の毛根部があります。毛幹部は一般に髪の毛と呼ばれる部分で、皮膚などの組織とは異なり、髪の毛自体に治癒能力はなく、傷が付いた場合、治ることはありません。毛根部は、浅い場合と深い場合があり、深いほど、健康な髪の毛の育成につながります。毛幹部の髪の毛は3つの層で構成されています。中心から、「毛髄質」、「毛皮質」、「毛表皮」といいます。

 

髪の毛のいちばん内側部分である「毛髄質」は、髪の毛の芯にあたる役割をしています。一般的に毛髄質の量は毛の太さによって決まります。保持機能があり、脂肪や色素が含まれています。また、毛髄質は新生児の毛髪にはありません。

 

髪の毛の大部分は「毛皮質」です。髪の毛の質や色に関して重要な役割を果たしており、毛皮質によって、毛質が決まります。毛皮質に含まれる多くのメラニン色素の量によって、体毛の色の差が変わってきます。また、繊維状のため、髪の強度を保ちます。

 

髪の毛の一番外側である「毛表皮」は、別名キューティクルとも呼ばれる部分です。キューティクルは毛先に向かって何枚も重なっており、外部からの刺激から髪の毛を保護する役割をしています。髪の毛のつやや手触りなどを決定する部分です。

 

毛根部には、表面に近い方から毛孔、皮脂腺、立毛筋、毛母細胞、毛乳頭があります。また、毛根部は、毛包という髪の毛を包み、囲んでいる組織と、毛細血管があります。中でも、髪の毛を造る過程で重要な役割を果たしているのは、毛母細胞、毛乳頭、毛包、毛細血管です。

 

毛根部の根元は、生長期にあるため、球状になっており、毛球と呼ばれています。毛球には毛母細胞があり、毛母細胞の中心に毛乳頭があります。毛乳頭は、周囲の毛細血管から、髪の毛育成のための栄養分や酸素を受け取り、毛母細胞に髪の毛育成の命令を出します。毛母細胞は細胞分裂を繰り返し、分裂した細胞は最終的に髪の毛となります。

髪の毛には「ヘアサイクル」があります。髪の毛が造られて抜け落ちるまでのことをいい、毛周期とも呼ばれます。ヘアサイクルは、男性で約3〜5年、女性で約4〜6年がひとつの周期といわれており、「生長期」→「退行期」→「休止期」→脱毛を繰り返します。

 

生長期とは、毛根部の根元にある毛母細胞が活発に細胞分裂を繰り返し、髪の毛を造っている時期です。初期・中期・後期生長期にわかれています。ヘアサイクルのほとんどは生長期で占められます。

 

退行期とは、毛母細胞の活動スピードが落ち、髪の毛を造る量が減少する時期です。色素細胞はメラニンの合成を中止し、細胞がやせていきます。退行期は約2週間ほど続き、その後、休止期へと移行します。髪の毛の生長活動が停止し始めるため、毛根は萎縮していきます。通常の抜毛はこの時期に起こります。

 

休止期は、髪の毛の生長が完全に止まる時期です。毛母細胞は細胞分裂を完全に停止し、毛根も萎縮しています。退行期で抜けなかった髪の毛は、髪の毛をとかすなどの簡単な衝撃で抜毛となります。休止期は約3ヶ月の期間があり、髪の毛が抜け落ちると、少しの間休止し、新しい髪の毛が生える準備が始まります。

 

日本人の髪の毛の本数は、平均約10万本といわれています。また、正常な抜毛でも1日50本から70本ほどが抜け落ち、また、新たに同じくらいの髪の毛が生えおり、髪の毛は毎日必ず抜けるものなのです。

 

脱毛症といわれる状態は、1日あたりの抜毛が100本以上ある状態のことをいいます。髪の毛の寿命で自然に抜ける髪の毛の他に、ストレスや疲労、偏食、喫煙などの原因により、新しく生え変わる髪の毛よりも、抜け落ちる髪の毛の量が多くなると、薄毛や脱毛症になってしまいます。

脱毛の原因は、普段の生活を送る中に多くの要因があります。

 

日常生活の送り方ひとつにも、脱毛の原因となることはたくさんあります。夜更かしをしたり、暴飲暴食、偏食などは、身体にも髪の毛にも負担がかかります。特に、脂分の多い食生活は抜毛になりやすいといわれています。バランスの取れた食生活、規則正しい生活を心がけることが大切です。タバコは、喫煙することで血液の流れが鈍くなり、髪の毛の生長の妨げになります。また、紫外線も脱毛の原因のひとつといわれています。

 

おしゃれを楽しむために、カラーリングやパーマ、ブリーチなどを過度にかけたり、いつも同じ髪型をしていたりすると、髪の毛や頭皮に大きな負担となり、抜毛が多くなる場合があります。また、シャンプーやコンディショナーを使用しての洗髪で、すすぎが不十分で、洗髪剤が頭皮に残ってしまうことも、抜毛の原因になる可能性があります。さらに、頻繁に帽子やヘルメットなどを使う場合も、頭皮への負担が考えられ、注意が必要です。

 

髪の毛を造るために、24時間働いている毛母細胞は、身体の中で最も活発に細胞分裂を繰り返している場所のひとつです。そのために、薬品による副作用や病気には、敏感に反応します。抗がん剤による脱毛は特殊かもしれませんが、内科などの脱毛症以外の場所の疾患によって、抜毛が増えるケースもあります。

 

脱毛の原因で、よく遺伝だからといわれますが、遺伝によって、必ず脱毛するというわけではありません。遺伝といっても、汗をかきやすいとか、脂性体質であるということが遺伝であって、普段のケアをしっかり行うことで、抜毛や薄毛を防ぐことは可能なのです。

 

精神的なストレスは、脱毛の原因としてよく挙げられます。人間が生活をしていく中で、どうしてもストレスはついてきます。ストレスが要因となり、偏食や暴飲暴食、寝不足、胃腸炎などの病気などが出てくることもあります。脱毛の原因は、あげていくと限りなく出てきます。脱毛に悩み、また、原因に心当たりがある場合は、改善するように心がけて行きましょう。

犬は、夏になる前と、夏が過ぎた後に、一気に毛が抜けます。これは、脱毛とは異なり、換毛といいます。換毛は、夏の暑い気温と冬の寒い気温に対応するために、夏毛と冬毛に生え変わることで、人間の円形脱毛症とは異なります。犬や猫にも、円形脱毛症はあります。しかし、犬や猫の場合は、円形脱毛症のような症状であっても、違う病気である場合の方が多いようです。

 

背中の背骨にそって人間の円形脱毛症のような脱毛がみられる場合、ノミアレルギーが疑われます。これは、ノミを駆除することでおさまります。また、からだの左右対称に脱毛がみられる場合、ホルモン性の皮膚炎の可能性があります。ホルモン性の皮膚病の場合、避妊・去勢を行うと、脱毛が改善される場合があります。

 

その他にも、カビが原因で身体のあちこちが脱毛したり、ノミやダニの寄生により、部分的に掻いてしまうことで、一部だけ脱毛することもあります。疥癬ダニの寄生では、身体全体の体毛が薄毛の状態になったり、耳などの柔らかい部分のみが薄毛になることがあります。また、食物アレルギーでは、口の周りの毛が薄くなる場合があります。

 

犬や猫は、体毛を部分的に抜いてしまう場合があります。主な原因はストレスです。人間でも、ストレス発散のために、髪の毛を抜いてしまうことがありますが、犬や猫でも同じことがあります。犬や猫はストレスを発散させようと、同じ部分を舐め続けます。猫などは、毛づくろいのために、毎日体を舐めていますが、ストレスを感じている場合、過剰な毛づくろいをしてしまい、最終的には、部分的に毛がなくなるまで続けます。ストレスの原因は様々で、生活環境が少し変化しただけで、起こる場合もありますし、暇でやることがなくて起こる場合もあります。

 

犬や猫などのペットは、人間のように、どこが悪いのか言うことができません。日ごろからのブラッシングやボディチェックが必要です。

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